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研究について

生物圏と地球環境の相互作用系の解明を目指し、

水・炭素・窒素安定同位体比を用いて以下のような研究を行っています。

シベリア北極圏タイガーツンドラ境界生態系の機能

東シベリア永久凍土帯河川流域の水循環変動

メタン生成と放出機構

植生変化と物質循環

シベリア・モンゴル永久凍土帯タイガ林の水循環・炭素循環・窒素循環

降水機構と水蒸気の起源

森林生態系-大気間の炭素交換過程

北海道同位体マップ

修士・卒業論文で可能なテーマ例

東シベリア永久凍土帯タイガ林生態系の水循環と植生

 東シベリアは、地球上で最も広く深い永久凍土に覆われた地域で、乾燥した永久凍土は、他に類をみないユニークな水循環システムを形成しています。落葉性針葉樹のカラマツは、乾燥と冬期の低温に適応しこの地域に優占し、蒸散過程を通して、この地域の水循環に大きな役割を果たしていると言えます。凍結した土壌は、氷として水を土壌中に保持し、その氷は暑く乾燥した夏に融けて水となり、植物の蒸散に使われています。気温の上昇は氷を融かし、森林の水分保持能力を低下させる可能性があります。地球温暖化は、この地域の水循環システムを変化させつつあるのでしょうか?また、この地域の変化は、地球の気候システムにどのような影響を及ぼすことになるのでしょうか?

タイガーツンドラ境界域における植生変化と温暖化ガス放出量の変化

 タイガ林の北端はツンドラとの境界です。東シベリアの北極圏の土壌中・永久凍土中には大量の有機物炭素が蓄積しています。そこでは森林生態系と湿地生態系が混在し、わずかな水分環境の変化に対して植生がダイナミックに変化していると考えられます。湿地ではメタンなどの温室効果ガスの放出が、そして森林では吸収が起こり、湿地になるか森林になるかによって温室効果ガスの放出は大きく変化します。地表面からわずか20-30cmの深さに永久凍土が存在することから、その氷の融解と生成は地表面の高さを変化させ、水の動きを変え、植生や物質循環あるいはアルベドの変化ももらすことになります。北極圏では急激な温暖化が進みつつあります。東シベリア北極圏はこれからどのように変化していくのでしょうか。また、地球の気候にどのように影響を及ぼしていくのでしょうか?

レナ川流量増加の謎

 世界第8位の大河川であるレナ川は、永久凍土帯を北に向かって流れ、北極海に淡水を運んでいます。近年、冬期の流量が増加しており、永久凍土の融解がその原因の一つである可能性が指摘されています。河川水の安定同位体比は、流出に寄与する地域や水の起源に関する情報を含んでいるので、流量と同位体比をあわせた解析は、河川水がどこから来ているのか、夏の雨か、永久凍土の融け水なのか、などに関する情報を与えてくれるはずです。レナ川の流量は何故増えているのでしょう?温暖化の影響?そして、レナ川が北極海へと運ぶ水量の増加は、気候や植生とどのような相互作用をしているのでしょう?

東シベリアタイガ林の窒素循環と炭素固定

 永久凍土帯上に広がるタイガ林は、地球上の炭素循環に極めて大きな影響を及ぼすと考えられます。植物が生長を始める初夏は、まだ地温が低く、土壌中には植物が生長に必要な栄養塩はまだ存在しません。冬期の低温、夏の乾燥という厳しい環境に適応したカラマツですが、栄養塩という観点からも厳しい状況で生育しています。乾燥や湿潤が栄養塩循環にどのような影響を及ぼしているのか、カラマツは土壌からどのように窒素を吸収しているのか、また、土壌以外からの窒素の供給はあるのか。植物は、窒素がないと炭素は固定できません。タイガ林が地球の炭素貯蔵庫として機能するための窒素は、どのようにまかなわれているのでしょうか?

モンゴル森林-草原境界における樹木年輪同位体比を用いた森林衰退の可能性について

 シベリアタイガ林の南限は草原との境界です。モンゴル北部のタイガ林はタイガ林の南限であり、また、永久凍土帯の南限でもあります。そこでは過去50年間に温暖化と乾燥化が進みました。また、そこでは水循環の変動だけでなく、放牧、違法伐採、森林火災などでも森林の衰退が起こることが懸念されています。年輪の炭素同位体比は、水分環境の変化を記録していると考えられます。そこで年輪の同位体比から過去の生育環境を調べ、森林の状況の変化を明らかにします。それぞれの地域で、環境はどのくらい変動してきたのでしょうか?地域によってその変動の大きさは異なっていたのでしょうか?将来森林はどのようになっていくのでしょう?

メタン生成の鍵を握る水素

 メタンはCO2に次いで重要な温室効果ガスです。湿地など還元的な(酸素のない)環境で、メタンを生成する古細菌により生成されます。このときメタン生成には水素が重要な役割を果たしています。水素は細菌や原生動物が有機物を分解する過程で生成され、それらの水素生成微生物からメタン生成菌に受け渡され、両者の間で水素をめぐる微生物共生系が成立しています。この巧みな微生物の共生の技により、系から放出される水素の量、メタン生成の速さが決まると考えられます。水素は、また、メタン生成の代謝経路も変え、結果として生成される炭素や水素同位体比も水素の濃度により変化すると考えられます。メタンの炭素と水素同位体比が水素濃度によりどのように変わるのか。直接伺い知ることのできない、共生系の匠の技を、系から放出される水素の量や、メタンの炭素・水素同位体比から解明することを目指します。

雲を作る水、雨の水はどこからくるか

 水の安定同位体比は、水の行方を追跡するのに有効なツールです。大気中の水蒸気が凝結して雲ができ、雨や雪が降りますが、その元になる水蒸気の水はどこから来るのでしょう?同位体比を用いた水の追跡・降水機構の解明は、生態系にとっての水源の水がどこから来るのかという問題に加え、集中豪雨のメカニズムの解析にも威力を発揮するはずです。降水などの同位体比に加え、土壌水や植物が蒸散している水、水蒸気の同位体比を測定し、乾燥地域の降水の起源、台風、集中豪雨、熱帯の雲など、水循環過程を解明します。東シベリアタイガ林では大気中の水蒸気の8割が植物が蒸散した水蒸気であることがわかりました。このような水蒸気がどのように雲を作り雨として降ることになるのでしょうか?

森林生態系-大気間の炭素交換過程

 森林は大気CO2の吸収先となっているのでしょうか?森林は植物の光合成によって大気CO2を固定すると同時に、土壌中では表層に蓄積した有機物が分解してCO2が生成され大気中に放出されています。森林生態系が大気CO2の吸収先になるかどうかは、固定量と放出量の収支によります。CO2の濃度に加え、CO2の炭素と酸素の同位体比を測定することにより、森林と大気間のCO2の交換過程の解明を目指します。

北海道同位体マップ

温暖化や人間活動が北海道の水循環水環境を変化させつつあります。河川水の同位体比は流域の水循環過程を反映して変化すると考えられます。従って、積雪量の変化など、水文過程の変化は地下水や同位体比の変化にも現れるはずです。また流域の土地利用は硝酸濃度など水質に影響を及ぼしています。北海道の河川水の水同位体マップの初期バージョンがこのほどできあがりました。無機態窒素濃度とその同位体比のマップを完成させ、水環境を解析していきます。現状をマッピングし、起こりつつある変化を検出し解析していきます。

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